近年、電子機器の高性能化・小型化に伴い、電子部品の発熱量が増加しています。機器の性能や信頼性を維持するためには、発生した熱を効率よく逃がす対策が欠かせません。そこで重要な役割を担うのが「TIM材(熱伝導性材料)」です。
本記事では、TIM材の役割や種類ごとの特徴、用途に応じた選び方について詳しく解説します。電子機器の熱対策を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
TIM材(熱伝導性材料)とは
TIM材とは「Thermal Interface Material」の略称で、電子部品から発生する熱を効率よく放熱するために使用される熱伝導性材料です。主に半導体やCPUなどの発熱部品とヒートシンクをはじめとする放熱部品の間に配置して使用します。電子機器の安定した動作や長寿命化を支える重要な材料として、幅広い分野で活用されています。TIM材が必要とされている理由
電子部品とヒートシンクは、一見すると隙間なく密着しているように見えます。しかし、それぞれの表面には目に見えない細かな凹凸があるため、実際には接触面に微小な隙間が生じています。この隙間に熱伝導率の低い空気が入り込むと、熱が効率よく伝わらず、十分な放熱性能を発揮できません。TIM材は、部品同士の間にある微細な隙間を埋めて密着性を高め、熱が伝わりやすい経路をつくります。発熱部品からヒートシンクなどへ効率的に熱を移動させることで、電子部品の温度上昇を抑えることが可能です。
AI普及によって高まるTIM材の重要性
近年は、生成AIをはじめとするAI技術の急速な普及により、データセンターやサーバーなどで使用される高性能な半導体の需要が拡大しています。AIの処理には膨大な計算が必要となるため、CPUやGPUなどの高性能化とともに、電子部品から発生する熱への対策も重要な課題となっています。また、電子機器の小型化・高密度化が進み、限られたスペースで効率よく放熱することも求められています。こうした環境で電子機器の性能や信頼性を維持するため、発生した熱を効率的に放熱部品へ伝えるTIM材の重要性は、今後さらに高まると考えられます。
TIM材(熱伝導性材料)の役割
TIM材には、発熱体からヒートシンクなどの放熱部品に効率よく熱を伝える役割があります。その性能を十分に発揮するためには、放熱特性だけでなく、柔軟性や耐久性、絶縁性なども重要です。ここでは、TIM材に求められる主な性能について解説します。
放熱特性
TIM材に求められる代表的な性能が、高い放熱特性です。発熱体とヒートシンクの間にTIM材を配置することで、接触面に生じる微細な隙間を埋め、熱の通り道を確保します。効率よく熱を移動させるためには、熱伝導率が高く、熱抵抗が低いことが重要です。また、TIM材そのものの性能だけでなく、発熱体やヒートシンクとの密着性を高めて界面で生じる熱抵抗を抑えることも、放熱性能を左右します。
柔軟性
発熱体やヒートシンクの表面には微細な凹凸があるため、TIM材には隙間に追従して密着できる適度な柔軟性が求められます。柔軟性が不足していると十分に隙間を埋められず、熱抵抗が大きくなる可能性があります。一方で、柔らかければよいわけではありません。グリースなどのTIM材では粘度が低すぎると使用中に材料が流出し、放熱性能が低下する場合があります。用途に合わせて、密着性と形状保持性のバランスを考慮することが重要です。
耐熱・耐久性
TIM材は、電子部品の発熱と冷却が繰り返される環境で使用されるため、耐熱性や耐久性も重要です。とくに高性能な半導体は、狭い範囲で急激な温度変化が生じる場合があります。耐熱性や耐久性が不足していると、長期間の使用によってTIM材が劣化し、熱抵抗が増加する可能性があります。また、温度変化によってグリースが接触面から押し出される「ポンプアウト」が発生することもあるため、長期的に性能を維持できる材料を選ぶ必要があります。
絶縁性
電子機器に使用するTIM材では、用途によって電気絶縁性も求められます。導電性のある材料が意図しない部分に接触すると、漏れ電流や短絡などが発生し、電子機器の故障につながる可能性があるためです。そのため、電気的な絶縁が必要な箇所では、放熱性能だけでなく絶縁性能も確認することが大切です。熱を効率よく伝えながら電気を通しにくいTIM材を使用することで、電子機器の安全性や信頼性を確保しやすくなります。
ハンドリング性
TIM材を選ぶ際は、製造工程における扱いやすさも重要なポイントです。たとえば、放熱グリースはディスペンサーを利用して必要な箇所へ塗布できるため、複雑な形状や細かな隙間にも対応しやすい特徴があります。一方、放熱シートはあらかじめ一定の形状に加工でき、保護フィルムを剥がして所定の位置に設置できるため、塗布工程が必要ありません。TIM材の種類によって施工方法や作業性が異なるため、放熱性能だけでなく、量産性や組み立て工程も考慮して選定することが大切です。
TIM材の種類と特性
TIM材にはさまざまな種類があり、形状や施工方法によって特性が異なります。代表的なものとして、放熱シート・放熱ゲル・放熱樹脂・放熱グリース(ペースト)が挙げられます。用途や使用環境、製造工程などを考慮して、適切なものを選ぶことが重要です。放熱シート
放熱シートは、シリコンやアクリルなどをベースに熱伝導性の高いフィラーを配合し、シート状に成形したTIM材です。発熱体とヒートシンクなどの間に貼り付けたり挟み込んだりして使用します。あらかじめ一定の厚みに成形されているため、塗布量の管理が不要で、貼り付けるだけで施工できることがメリットです。また、ポンプアウトが起こりにくく、安定した品質を確保しやすい特徴もあります。
一方、液状やペースト状の材料と比べると細かな凹凸への追従性が低く、接触面に空気が残る場合があります。圧縮によって部品へ負荷がかかることもあるため、使用箇所に適した厚みや柔軟性を選ぶことが大切です。
CPUやGPUをはじめ、LED照明、車載ECU、通信機器など幅広い分野で活用されています。
放熱ゲル
放熱ゲルは、シリコンなどをベースとした柔らかいTIM材で、塗布や充填によって使用します。柔軟性と追従性に優れているため、複雑な形状や高さの異なる部品、局所的な凹凸がある箇所にも密着させやすいことが特徴です。低い圧力でも隙間を埋めやすく、部品への負荷を抑えながら熱の通り道を確保できます。製品には柔らかさを維持する非硬化型のほか、塗布後に硬化して形状を保持するタイプなどがあり、用途に応じた使い分けが必要です。
一方、塗布量によって厚みが変化するため、適切な量を管理しなければなりません。また、材料によっては長期間の使用によるブリードなどが生じる可能性があるため、使用環境を考慮した選定が求められます。
主に、車載電子部品や産業機器、電源モジュール、通信基地局など、高い密着性・低応力が求められる用途で使用されています。
放熱樹脂
放熱樹脂は、エポキシやシリコンなどの樹脂に熱伝導性フィラーを配合した材料です。液状の材料を塗布・充填した後に硬化させることで、放熱と部品の固定を同時に行えるものもあります。硬化後は部品に密着するため、振動や衝撃が加わる環境でも使用しやすい点がメリットです。また、部品を樹脂で覆うことで、防水性や防塵性を求める用途にも活用されています。
ただし、硬化後は取り外しにくくなるため、部品交換や修理などの再作業性は低下します。さらに、材料によっては硬化時の収縮によって部品へ負荷がかかる可能性があるため、用途や製造工程に適した材料を選ぶ必要があります。
LEDパッケージやパワーモジュール、車載ECUのポッティングなど、接着固定が必要となる電子部品で使われています。
放熱グリース(ペースト)
放熱グリースは、粘性のある樹脂に熱伝導性フィラーを配合したペースト状のTIM材です。ディスペンサーなどを使用して発熱体とヒートシンクの間に塗布し、表面の細かな凹凸や隙間を埋めて使用します。高い追従性を持ち、薄く塗布できることから熱抵抗を抑えやすい点がメリットです。複雑な形状にも密着しやすく、塗布工程を自動化することで量産にも対応できます。
一方、塗布量や厚みによって放熱性能が左右されるため、正確な管理が必要です。また、発熱と冷却の繰り返しによってグリースが接触面から押し出される「ポンプアウト」が発生すると、時間の経過とともに熱抵抗が増加する場合があります。そのため、長期的な信頼性や使用環境も考慮して選定することが重要です。
TIM材の選び方・使い分けのポイント
TIM材は、熱伝導性だけで選ぶのではなく、使用環境や求められる機能、製造工程などを総合的に考えることが重要です。ここでは、重視するポイントごとに適したTIM材を紹介します。メンテナンス性を重視する場合
メンテナンス性を重視する場合は、放熱シートや非硬化型の放熱ゲルが適しています。硬化する材料と比べて取り外しやすいため、部品の交換や修理が想定される製品に向いています。とくに放熱シートは、古いシートを取り外して新しいものに貼り替えやすく、メンテナンス時の作業負担を抑えられる点がメリットです。試作品など、部品の取り外しや再調整を行う可能性が高い場合にも選択肢となります。
部品への負荷抑制を求める場合
半導体などのデリケートな部品への負荷を抑えたい場合は、低硬度タイプの放熱ゲルが適しています。柔らかく変形しやすいため、低い圧力でも部品表面の凹凸や隙間に追従できます。硬い材料を圧縮して密着させる場合と比較して、部品に加わる圧縮応力を抑えられる点がメリットです。微細な構造を持つ部品や、圧力による変形・破損を避けたい箇所で活用できます。
防水・防塵・耐振を求める場合
防水・防塵性や振動への耐久性を重視する場合は、硬化型の放熱樹脂や放熱ゲルなどが選択肢となります。材料を充填して硬化させることで部品を保護できるため、外部環境の影響を受けやすい用途に適しています。たとえば、振動や温度変化にさらされやすい車載機器や産業機器などで活用されています。部品の固定と放熱を同時に行いたい場合は、熱伝導性を備えた接着剤を使用する方法もあります。
コストと量産スピードを追求する場合
大量生産では、TIM材そのものの価格だけでなく、施工に必要な工数や作業時間も含めて検討することが大切です。あらかじめ必要な形状に加工された放熱シートであれば、所定の位置へ貼り付けるだけで施工でき、厚みや使用量も管理しやすくなります。一方、放熱ゲルやグリースなどの塗布型材料は、ディスペンサーを利用した自動塗布が可能です。設備の導入コストは必要になりますが、塗布工程を自動化することで量産時の作業効率向上が期待できます。
薄さを求める場合
スマートフォンやタブレットなど、薄型化が求められる電子機器では、TIM材を設置できるスペースも限られます。このような場合は、薄膜化しやすい放熱グリースや極薄タイプの放熱シートなどが選択肢となります。とくに放熱グリースは、発熱体とヒートシンクの微細な凹凸を埋めながら薄く塗布できることが特徴です。ただし、必要な放熱性能や隙間の大きさによって適切な材料は異なるため、実際の設計条件に合わせて選定する必要があります。
TIM材のことなら「室町ケミカル株式会社」がおすすめ
TIM材をはじめとする機能性ペーストの製造・加工を検討しているなら、室町ケミカル株式会社がおすすめです。約40年にわたり接着剤や機能性ペーストに携わり、豊富な製造技術とノウハウを培ってきました。現在は特に機能性ペーストの受託製造加工・小分けに注力し、顧客のニーズに応じた生産体制を整えています。混合、三本ロール分散、フィルタリング(異物除去)、脱泡、小分け・シリンジ充填といった工程を一気通貫で依頼できるほか、一部工程のみの依頼にも対応しています。接着剤や機能性ペースト、グリースなどについて、少量試作から量産立ち上げまで柔軟にサポートしている点も強みです。
また、自社開発の機能性接着剤「ムロマックボンド」をはじめ、国内外メーカーの接着剤や塗料も取り扱っています。電子産業向けの設備消耗品や装置まで幅広く対応しており、長年培った加工技術を生かして、用途や生産条件に合わせた製造方法・工程を提案してもらえます。
まとめ
AIの普及や電子機器の高性能化・小型化が進むなか、発熱による性能低下や故障を防ぐための熱対策はますます重要になっています。TIM材は、発熱体とヒートシンクなどのすき間を埋め、熱を効率よく伝えるために欠かせない材料です。TIM材には、放熱シートや放熱ゲル、放熱樹脂、放熱グリースなどがあり、それぞれ放熱性能や柔軟性、施工性などが異なります。熱伝導率だけでなく、使用環境やメンテナンス性、量産性なども考慮して、用途に適した材料を選びましょう。
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